イタリア行きたい。

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この地にいるのもあと少しだし記念に激辛料理食べに行ったらただの地獄のはじまりだった話。煉獄編

激辛料理を食べたが地獄を見た。

 話はさかのぼるが去年、激辛が恋しくてペヤングENDを妙に食べていた時期があった。その時期に上司が「あそこの激辛はヤバいぞ。好きそうだから行ってみたらどうだ。完食すると名前が載るぞ?」と教えてくれた。

僕は割と激辛料理が好きで、大学時代は大学近くのラーメン屋さんであまり出ない激辛ラーメンをいつも食べていた質だ。とはいっても激辛にめっぽう強いわけではなく当然次の日はお腹を壊すことが多かったし、スープまで飲むほど口の中が鈍感なわけではなかった。

ヤバいかと言われて食べに行くほど愚かでもなかったので話半分に聞いていたが、この地を去ると決めてからは一度だけ挑戦してみようかなという気持ちが大きくなり、ついに昨日挑戦することに決めた。

 

とはいってもヤバいと言われているものに準備なしでいくほど私は自分を過信していない。やるからには食べきりたいのだ。そのためにはなんだってする。なので下準備として挑戦する前に口内をコーティングしてくれるマヨネーズや牛乳といった油分を多く含む食品を摂取してから店に向かうことにした。

店内に入る前に牛乳を飲み干しマヨネーズを一定量吸ってから入店した。

 

 

店内を見渡すと、激辛メニューなるものがない。しからばと思い、店員さんに聞いたところ、10倍チャレンジですね?1倍につきレンゲ半分の量の唐辛子が入ります。10倍を30分で食べきれば、無料。完食すれば名前が載ります。

 

ということは、唐辛子レンゲ5杯分か・・・受けて立とうじゃないか・・・

 

ということで出てきた。店員さんが無理だったらやめてもいいのよ?と心配されたが、どうせ定型文なのではなかろうかと急に偉そうになった激辛マニアもどきの俺は受け取った。

こういった勝負スタートは一瞬で決まる。そう思い、タイマーのボタンを押し俺は勢いよく麺をすすり始めた。

スタートは良かった。麺を勢いよくすすっている間、口内のマヨネーズコーティングが守ってくれ激痛を感じることはあまりなかった。しかし口内にとどめておくと話は別だ。あっという間に辛みは口内を侵食し、私のコーティングを勢いよく外していく。

そのため、味を堪能する余裕はなく、5噛み程度で飲み込むという戦法で麺をかき入れていくことにした。しばらくするとコーティングの効き目も薄くなっていき、すするともれなくむせるようになってきた。そこからはモードチェンジだ。レンゲに麺をのせ、麺を一度に口内へと運ぶスタイルに切り替えた。

割と滑り出しもよく、麺はみるみるうちに減っていった。

ということで10分経過の後、残りはスープを残すのみとなった。しかし、不肖イトシ激辛ラーメンのスープを完食した試しがこれまでないのだ。

正直ここまでの戦いは前哨戦に過ぎない。店員さんたちもまぁここまでは・・・ね・・といったような熟練者の目で「大丈夫?」と声をかけてくる。

 

しかし、残りはスープのみ。飲み込んでさえしてしまえばもうゴールだ。心の準備をして僕はどんぶりを持ちあげ、口から流し込む。目の前には赤い血の池地獄が広がっており、口内を素通りしたスープが食道へと駆け込んでくる。その瞬間、僕はどんぶりを傾けるのをやめた。

 

これはダメな奴だ。辛いとかではない。壊している。こわしや我聞*1だ。胃が拒んでいる。それ以上連続で飲むことができなかった。

少ししか減っていないが、このペースでいけば胃をだましだましおおよそ5回飲み込めば終わりが見える。そう思い2回、3回と飲み込んでいった。

しかし、飲み進むにつれて違和感が増長する。スープがだんだんとドロドロしてきたのだ。正体はレンゲ五杯分の唐辛子。そう、スープも所詮予選に過ぎなかった。本当の勝負は唐辛子との勝負だった。

口が受け入れても胃が拒む。そんな状況をしり目に時間は刻一刻と迫っていった。胃から強烈なノックが聞こえた。これはまずい。トイレに駆け込む。私は便器に向かいダッシュした。しかし、何も出なかったのだ。なぜか?

胃は全力で拒み人間の限界を超えた異物を出そうとする。しかし、それは食道にとっても同じことだった。これ以上食道に入ってくるな。ましてや一度通ったものをもう一回通す?正気の沙汰じゃないね。そうして、唐辛子たちは胃の中にプリズンロックされてしまった。もう出ることはない。

 

全てを観念し席に戻ったとき、時計は30分を指していた。私の無料チャレンジは終了したのだった。残ったのは大量の唐辛子のみ。

いや、無理でしょう。こんなもの食べられるはずがない。スープなど序の口だったのだ。

ここで食べきったとしてもお金が返ってくるわけでもない。ここからはただの名誉のための戦いだった。この量の唐辛子を食べることで何か変わることができるのだろうか。俺には何も残らないであろう。あったとしてもお店に名前が残るだけだ。

そこに神の啓示が舞い降りた。

 

「どうせ、そんだけ食っちゃったんだから明日以降のお前の腹の調子はどっちにしろ地獄やで」

 

そうだった。引いても地獄、進んでも地獄だ。どっちの地獄がいいと問われれば俺は迷わず名誉の地獄を突き進む。レンゲが自然と動く。唐辛子をどんぶりから救い出す。おれはこのラーメンを救う。おれはこの戦いに終止符を打つ!!!

 

 

こうして俺の戦いは終わった。クリアタイムは41分32秒。店内に張り出されている時間には遠く及ばないが、すがすがしい気分であった。そんな俺の口から出た言葉は陳腐な言葉「スタバなう」であった。

 

もう二度と激辛ラーメンなんて食わない。

 

 

その後、店主からそれ毎週食べに来る人いるんだよね。とかいう異次元の話を聞いたが俺の耳には入ってこず、俺は店を後にした。

 

 

 

 

… こ れ か ら 本 当 の 地 獄 が 待 っ て い る と も し ら ず に …

*1:週刊少年サンデー』連載、2004年11号から2005年52号までの全88話を連載。コミックスは全9巻